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『オーダーメイド殺人クラブ』 辻村深月/集英社

タイトルがよくない。自分の望み通りの殺人を依頼するという点では確かにオーダーメイドなのだが、「殺人クラブ」ではなかったし、このタイトルでは多くの読者が手に取らずに素通りしてしまう恐れがある。

なぜタイトルにケチをつけるのかといえば、小説の中身が非常に素晴らしかったから。こんなにいい作品なのに、タイトルでめちゃくちゃ損してるよ!と、もったいない気持ち。中身はいいのにジャケットで損してるアルバムみたいに。

と、いつまでも文句を言っても仕方ないので良いところを。中学2年生女子の、学校での人間関係が世界のすべてであるような、自意識過剰で息苦しい日常をとても丁寧に描いていて非常に読み応えがある。読んでいて、「俺は中学生の時に女子じゃなくて本当によかった」と妙な感想を抱いてしまった。もちろん中2男子だってろくなもんではなく、自分は絶対に中学時代には戻りたくないと思っているくらいだが、この小説は著者も主人公も女子なので、男子のダメダメな部分がかなり薄めて書かれているのでそんなに男子の部分は気にならなかった。むしろ男子は美化して書かれすぎな気もするが、まあそこはいいや。クラスの中には暗黙の序列があって、いけてない男子を「昆虫系」とネーミングしている。明らかに昆虫系であったろう私は、そんな中学生のクラスの雰囲気を見事に描き出し、思い出させてくれた(思い出したくはなかったが)著者の力量をすごいなーと感心した。著者インタビューでも、これまで封印してきた「中学生」をかなり気合を入れて書ききった、というようなことを述べていたが、その意気込みが伝わってくる力作だ。

ヤングアダルト小説の新しい定番となるのは確実だろう。そして大人が真剣に読めるヤングアダルトものとしても稀有な一冊。特にラストシーンの鮮やかさが素晴らしい。自分は「トイストーリー3」のエンディングなどを思い出してしまった。辻村作品は何作か読んだことがあり、好きなものとつまらなかったものにはっきり分かれていたが、これは自分の中ではダントツに最高傑作です。現時点では今年の上半期第一位に挙げておきます(そんなにたくさん読んでないけど....)。
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by akuto9 | 2011-06-27 12:35 | 意識朦朧書評

『世界屠畜紀行』 内澤旬子/角川文庫

まず、これを文庫に入れた角川書店は偉い!親本が解放出版社なので文庫になるにしてもだいぶ先かなーと思ってたので、意外に早い文庫化は嬉しい。

スーパーで、パックされた沢山の肉を見るたび、「この店だけでこんなに沢山の肉があるんだから、日本全国で毎日どれくらい多くの牛や豚が殺されているのだろう」といつも思っていた。どこで、どんな過程を経て動物が食肉になっていくのか、その詳細はあまり知られていない。これだけ毎日のようにテレビで「工場見学」的な番組が流されているのに、動物が食肉になる過程が放送されることはない。これだけ身近な食材なのに、みんな毎日食べてるのに、不自然なくらい屠畜の部分は表に出てこない。そんな屠畜の現場を、しかも日本だけでなく世界のあちこちに行って、体当たり取材したのがこの本だ。

奥が深い様々な屠畜の過程を詳細なイラストつきで解説している。その部分はもちろん面白いし、屠畜業への差別という硬派な問題も扱っていて考えさせられるが、いちばん面白いのは著者・内澤さんのキャラクターである。異文化に、そして危険な職場に、どんどん乗り込んで好奇心いっぱいに取材する。その肉好き魂は読んでいて痛快だ。この本は彼女だからこそ書けたものだ。

家畜を可愛がることと殺して食べることは矛盾しない。自分が肉を食べているということに対して初めて自覚的になれた気がする。
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by akuto9 | 2011-06-25 14:32 | 意識朦朧書評

似ている図鑑

新刊の『もっと くらべる図鑑』、『くらべる図鑑』と表紙が似すぎ。大ベストセラーの続編は一目で区別できるようじゃないと困るなー。
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by akuto9 | 2011-06-19 07:23 | ふらふら業務日誌

昨日の特記事項

・長谷部誠『心を整える』幻冬舎、が売れすぎだ。
・『KAGEROU』が久々に売れた(1冊)。存在を忘れてた。
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by akuto9 | 2011-06-19 07:15 | ふらふら業務日誌

『キミは知らない』 大崎梢/幻冬舎

良くも悪くも中高生女子向けといった感じ。どうせならもっと露骨にヤングアダルトあるいはラノベっぽくした方がよかったのでは?謎を探りにある場所へ出向く最初の部分だけは面白かったけど、出向いた先でまさかあんな展開になるとはね…。四十前の男にはちょっとついていけませんでした。
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by akuto9 | 2011-06-08 18:39 | 意識朦朧書評

仁義なき

朝、9歳の息子がなかなか起きないので、耳元で「仁義なき戦いのテーマ」を大音量で流してやった。
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by akuto9 | 2011-06-07 21:45 | 老体育児記

クラプトンのおばあちゃん

『beatleg』の6月号は、デレク・アンド・ザ・ドミノスの特集だったが、1971年当時のエリック・クラプトンが自分のおばあちゃんと写っている写真が載っていた。すごくいい写真だ。
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by akuto9 | 2011-06-06 08:57 | 出鱈目音楽話

『災害ユートピア』 レベッカ・ソルニット/亜紀書房

災害時には、その被災地の住人たちの間で自然発生的に自ら進んで利他的に協力しあうコミュニティーが出来上がる、ということをアメリカの過去の災害事例をもとに検証した本。今回の大震災でも、たくさんの助け合いの例が報告されているが、それは決して「日本人だから」起こったことではなく、非常時の人間社会にある程度普遍的に見られる現象のようだ。何も指示や強制などなしに、自然に協力しあう共同体が出来上がるのはある意味理想的な状態であり、それを「災害ユートピア」という言葉で表現しているのだが、アナーキズムの思想を引き合いにだして検証している部分が本書の中でもっとも興味深かった。

災害が起きると略奪やら暴動やらが起きて治安が悪化する、というイメージがあるが、実際はそんなことはあまりなかった。むしろ、そういう思い込みで恐怖感に追い立てられた政治家やら軍やら警察やらが、誤った方向に権力を使って悲劇を起こした例の方が問題にされている。それを「エリートパニック」という言葉で表している。実際には略奪などしていないのに、怪しい行動をしていると勝手に判断した軍隊が無実の住人を射殺したり、白人高年齢層の男たちが作る「自警団」が無実の黒人を射殺したり。アメリカにおける黒人差別や銃社会の問題は相当に根が深いものだと驚かされるが、日本でも関東大震災時のデマによる朝鮮人虐殺や大杉栄殺害などがあったのだからアメリカだけの問題ではない。

今回の震災でも、被災地の現状と掛け離れた、政府や国会議員たちの迷走ぶりを見ていると「エリートパニック」的なものの存在を感じずにはいられない。住人による自発的な協力コミュニティーが災害発生後比較的短期間で終わってしまうのは、公権力による介入があるからだと考察されている。公権力介入以前のいわば無政府状態での災害ユートピアの発生は、人間の性善説的な可能性を期待させてくれるが、その性質上どうしても短期間に限られてしまうので、それが継続した時にどうなっていくかという興味深い問題を検証できないことが残念である。
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by akuto9 | 2011-06-03 22:41 | 意識朦朧書評