お盆が終わったあたりから万引きが増えてやりきれん。最近目立つのが小さい子連れママの犯罪。いくら物心ついてない年齢とはいえ、自分の子どもの目の前で盗むか?それが幼児教育の本だったりするんだから、怒りを通り越して呆れてしまう。教育が必要なのはあんたのほうだ!幼稚園からやりなおせ!と言いたいが、これは罵倒の言葉というよりも本当に切実な問題を指し示しているのかもしれないな、と思いつつ仕事にならぬ不毛な時間を過ごすのであった。
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by akuto9
| 2007-08-30 23:18
| ふらふら業務日誌
昭和十二年から十三年にかけて『新青年』に連載された大作。「魔都」という言葉から、もっとおどろおどろしい内容を想像していたのだが、意外に普通の探偵小説だった。読み所は後半の地下迷宮。公には伏せられた江戸の地下水道跡に新聞記者が迷いこむ。以前紹介した『帝都東京・隠された地下網の秘密』秋庭俊(新潮文庫)では、戦前の東京の地下には秘密の地下網があり、その一部は江戸の地下水道跡を利用したものと推測していたが、この小説はそれを裏付けるようで非常に興味深かった。ただし探偵小説としては冗長でいささか退屈だった。
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by akuto9
| 2007-08-24 19:28
| 意識朦朧書評
「NHKみんなのうた」で子供たちに大人気の「おしりかじり虫」(作・うるまでるび/振付・南流石)の「うたとおどりのほん」が入荷(主婦と生活社)。あのメガヒット「だんご3兄弟」をひきあいに出して比べる向きもあるようだが、全く隙のない「だんご」と並べてみると、「おしり」は楽曲がかったるく間延びしているし(そこがこの曲の魅力ではあるのだが…)歌詞も絵も好き嫌いが分かれそうなので、さすがに「だんご」のような流行りにはなりえない。秋冬の幼稚園での踊りに使われたりするのだろうか?売れ行きが読みにくい本である。
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by akuto9
| 2007-08-23 23:05
| ふらふら業務日誌
『ミュージック・マガジン』9月号の特集は「渋谷系」。小西康陽のインタビューが面白かった。「なんか渋谷系って三日天下だったんだなって(笑)。ただ思想というか在り方としてはその後もずっと残っていってると思うんです。自分が作ったものではない音楽への愛情が根幹にある音楽。それらをみんな渋谷系と言っちゃえばそうなると思う。僕自身"音楽より自分が好き"ってアーティストをあまりいいと思ったためしがないんで、"自分より音楽が好き"って人の作品がこれからもたくさん出てくればいいなあって思いますね。結構本気で」同感。
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by akuto9
| 2007-08-22 23:10
| 出鱈目音楽話
年配の女性からの電話。「おたくで買った本を読み終わったんですけどね」「はい(何かクレームかなあ…)」「買い取ってくださらないかしら」「??え、はい??」「古本屋に売ると古本になっちゃうでしょう。本屋さんで買い取りは行ってないのかしら」「??はあ。当店では行っておりません」「やってる本屋さんはないものかしら」「あまりないと思いますが…」いまいち言いたいことがよくわからなかったのだが、古本屋より高く買ってくれると思ったのだろうか?それにしても読んですぐに売りたくなる本だったんですか?『●●のニーナ』
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by akuto9
| 2007-08-21 23:54
| ふらふら業務日誌
嶽本野ばら氏の活躍や『マリア様がみてる』の人気等で「乙女小説」というのは現在支持を得ているジャンルだと思うのだけど、その元祖ともいえる本作品が、文庫で手軽に読めないのはどういうわけだろう(国書刊行会から単行本3巻で出ているが、高い)。私は古本屋の100円コーナーで新学社文庫版を見つけたのだが、挿絵も含めてとても品の良いつくり。
大正期に『少女画報』誌で連載された作品で、「紅椿」「紫陽花」「桔梗」など花のタイトルがついた九つの短編からなっている。ほとんどが女学校での友人関係、というよりほとんど憧れ・恋心の同性愛的心情を綴ったもの。少女の一般的な恋愛対象である若い男は意図的に排除され、男が出てきても疫病で死ぬ幼い弟とか爺さんとか酒乱の父とかだけである。こういう閉鎖的な同性愛的物語というのは形を変えて現在ボーイズラブ系として花開いているのだろうか、と考えてみたりする。 いちばん悲惨な「釣鐘草」には乙女のごとく泣かされたが、ここでは最も激しい「アカシヤ」を紹介(以下もろにネタバレあり)。女学校の新任女教師と、美少女生徒、勝気な少女の三角関係。まずは女教師が授業中にお気に入りの美少女を見つめる視線。 「なにゆえとなくおのずと止まった歩みを、そのままにわたしはじいっと立ち止まって丘さんの机のそばに立ちました。机にいまさしむかって、なめらかな洋紙のうえに象牙のペン軸をにぎって走らせるそのこまやかに美しい指の主を見つめましたの――ふくよかな頬は、次からつぎへとつづり字をおもい出す努力にか、やや上気してうすあかく、なおさらにかわいらしいその顔を、紙の面ちかくむけて前へかがむと、うしろの襟足があらわに美しいほそい襟首に、純白のえりにかさなる濃紫の銘仙の背にすらっとお垂髪がふわりとけむるように流れおちるそのすえに、薄茶色の光沢のよいリボンが、ふくらんですっきりむすんで椅子の背にさわって、その下に海老茶の袴の腰に、絹のレースのもようが白く浮いて・・・もう、わたしすっかり見とれておもわず、うっとりして、書き取りの句を読みちがえたほど・・・」 濃厚だ・・。これが現代の男性教師の視線ならば間違いなく変態教師扱いである。 その後、女教師に度々つっかかってきた勝気な少女が、実は美少女を愛するあまりの嫉妬から反抗したのだと、嵐の夜(!)に、告白に来るシーン。 「先生――、わたしは今までの失礼をお詫びに今晩まいりました――先生、どうぞおゆるしくださいまし、許してくださいませ。(中略)先生、私はわたしは――あの――丘さんを――丘さんを――丘さんがすきでならなかったのです、ところが先生、先生は丘さんを愛していらっしゃるのをわたしはさとりました。わたしは先生のおにくしみを受けて、わたしの好きな丘さんは先生に愛されていらっしゃる。この両端にわかれた悲しい差別は、わたしを今日までどんなに泣かせたことでしょう――先生もうなにも申し上げません。先生わたしは生徒として先生をかりにも呪ったりにくんだりした大きいおそろしい心の罪に、もうこれ以上ひたることはいやでございます。わたしは今宵かぎり、この学校のある土地を去りましょう、郷里へ郷里へかえります。先生、おわかれの前にただ一言おわびをしたかったのです、先生、ゆるしてください、棚島郁は哀れな子でございます、どうぞ・・・先生・・・ゆるして・・・」 そして、この娘は一晩で驚くべき事務処理手続きの早さを見せる。 「翌朝わたしがあおざめた顔で登校したとき、すでに棚島郁子は学籍をみずから消し去って、遠く郷里の北海道の十勝平野へ帰ったあとでした」 学籍をみずから消し去って・・・。十勝平野へ・・・。すごい。女教師はおおいに反省し、十勝まで郁子に会いに行く。そこで郁子の母と会うシーン。 「『郁は気が狂いました、ふびんな子でございます』と、母なる人はわたしのまえで泣き伏したのです」 「(アカシヤの)花咲く牧場の木かげに、すんなりとよりすがった寂しいさびしい人のかげ、おお、それが魂を生きながらうばわれた、あわれな少女のうつつのはかない姿(郁子さんどうぞこのわたしの涙を知ってくださいまし)」 ・・・(涙)。もちろん教師はその後、辞職する。 このように、濃厚で豊かな物語世界、そして読みやすくとても品が良い文章は現代でも十分に楽しめる。コバルト文庫あたりに入っていても、おかしくないんじゃないかな。各出版社さん、文庫に入れてみませんかね? ▲
by akuto9
| 2007-08-11 22:39
| 意識朦朧書評
こちらは2003年の第10回日本ホラー小説大賞受賞作。加虐趣味全開のカルトな短編。
「ずっと姉が欲しかった。姉を飼うのが夢だった。 脂祭りの夜、出店で串刺しにされてぎゃあぎゃあ泣き喚いていた姉ら。」 冒頭の部分で嫌になる人はなるだろう。ここでの「姉」は実の姉ではなく、夜店で串刺しにされて 売られている獣かペットとしての女性。「姉」という漢字をよく見てみると、「女」と「市」だし、 「市」という字は串刺しにも見えるから、姉という漢字からの着想なのかもしれない。 この「姉」を飼う妖しい魅力に取り付かれてしまった少年の崩壊の物語だが、ホラー小説というよりも、荒俣宏が賞の選評で述べているような見方で読んだ方が面白いと思う。 荒俣「場末の見世物という純なイメージで「串刺しの姉さん」を眺めていいのか、それとも渋谷か原宿にたむろするピアスだらけの姐ちゃんの毒ある風刺と見るべきなのか、迷った」 やはり風刺でしょう。祠部矢(しぶや)村、海老巣(えびす)、葉等熟(はらじゅく)、夜余木(よよぎ)という地名も出てくるし。誰かにすすめる気にはなれないけど、この過剰な想像力は確かに尋常でない。 ▲
by akuto9
| 2007-08-11 00:20
| 意識朦朧書評
2005年の第12回日本ホラー小説大賞受賞作(この賞って、過去の半分以上が大賞受賞作なし、だったんですね)。あるところに、不思議な夜の市場が開かれる。ここはちょっと異空間のような場所で、不思議な商品をたくさん売っているが、何かを買うまでは決して元の世界に戻れないという。何も知らない同級生の女性を連れて、この夜市に出かけた青年の目的とは、そしてそこで出会った老人の正体とは・・・。まず、この夜市の不思議な世界を見事に描写していて、自分も異空間に迷い込んだような不気味な感覚を味わえる。そして後半の驚くべき展開。ホラー小説大賞にふさわしい、不思議で不気味でしみじみとさせられる傑作短編。
同時収録の書き下ろし「風の古道」も傑作!これまた異空間である古の古道に迷い込んだ少年たち。そこで出会った謎の青年との旅。日常のすぐ脇に、こんな不思議な、そしてどこか懐かしい道が本当にあるような気にさせられる。それは少年の日の冒険心と未知なる世界への畏怖心につながっているようだ。こういう物語、大好きです。 日常のすぐ隣にある異世界、少年、冒険、自己犠牲、等々。 この2作だけで、著者の強烈な個性と大きな才能を感じることができる。 ▲
by akuto9
| 2007-08-09 23:33
| 意識朦朧書評
セクハラや性差別につながる発言をチェックするためにFC(フェミ・コード)という基準を作り、著名人の発言を吟味するという内容。斎藤美奈子だけに面白おかしく書いているが中身は真面目で、読み終えると、言葉に対して無自覚であってはいけないなと強く思わされる。
しかしまあ、失言大王森喜朗を筆頭に政治家のおっさんたちの発言はわかりやすい。 「女性にもいかにも「してくれ」っていうの、いるじゃない」福田康夫 「文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババァなんだそうだ」石原慎太郎 「放火なんていうのは、どちらかというと女性の犯罪なんですね」谷垣禎一 男性だけでなく女性の発言にもFCセンサーが発動する。 「女性アナウンサーって、普通のOLなんですよ」久保純子 「わたくし十三年間仕事をしてきて、女で損だと思ったことなんて、一度もありません」さかもと未明 「女性の力で勇気、感動、情熱に満ち溢れた国に改革いたします」山東昭子 どこが問題だかわかりますか?わからない方はぜひ本書を。 他にも大江健三郎・村上春樹・村上龍・渡辺淳一といった大作家たちもチェックされてます。 差別的に使おうと思っていない言葉の中にも、無意識のうちに差別的な考え方が反映してしまったりする。それはより根深い問題なのだなあと色々考えさせられた。 ▲
by akuto9
| 2007-08-09 00:12
| 意識朦朧書評
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