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『ビートルズを知らなかった紅衛兵』 唐亜明 (岩波同時代ライブラリー)

副題に「中国革命のなかの一家の記録」とあるように、抗日戦争時代から天安門事件までのある一家の激動の記録であり、文化大革命時代をメインに語られる。著者の父が文革時代に四人組に目をつけられて投獄され、一家が苦労するあたりを読むと、文革時代の中国はさながら毛沢東信仰の宗教のようで、まっとうな人間には受難の時代だったんだなーとつらくなる(魯迅の弟がつるしあげにされるシーンは本当にひどい)。著者は10人兄弟(!)なのだが、困難な時期も家族のつながりがあって乗り越えられたように感じる。
現代中国の側面史として面白い本だったが、個人的に興味深かったのは動物に関する著者の少年時代の思い出だ。

「ある日、弟のいない時、お手伝いさんがにわとりを一羽殺そうと庖丁でにわとりの首を切り始めていた。そこへ弟が帰ってきた。彼はにわとりを抱いて泣きじゃくった。あまりにかわいそうなので、母は半分切られたにわとりの首を、ふつうの針と糸で縫い合わせた。不思議なことに、このにわとりは一週間もたたないうちに元気になった。ただ気管を切られたので、声が変わってしまい、悲惨な声で鳴いた。」

「解放軍兵士は私に二匹の大きなうさぎをくれた。(中略)北京に持って帰り、かごの中で飼っていたが、うさぎは汚いと隣人が文句を言ってきたので、兄が殺してしまった。醤油で煮付けて、私は泣きながら皆と一緒に食べた。」

「広東人が猫を食べるというのをまねして、新しく捕まえてきた猫を棒でなぐり殺し、皮をはいで柔らかく煮て食べた。なかなか美味い。うさぎの味と似ている。」

「(広州では)蛇料理の店もあったが、高いので一度も食べられなかった。市場では、生きた猿を売っている。一頭が四十元。生きたままで頭をたたき割って、脳味噌を食べるという。それから、ねずみも売っている。生まれたばかりで、真っ赤な色をしている。広州の人はそのまま醤油をつけて食べる。日本流に言えば「ねずみ刺し」とでもなろうか、ねずみが口の中で「チー、チー」と鳴くそうだ。」

今でも「ねずみ刺し」や「猿の脳味噌」を食べる習慣があるのかどうか知らないけど、食文化の違いというのは面白いものだ。世界は広く、歴史は長い。
by akuto9 | 2007-12-05 12:11 | 意識朦朧書評


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