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『名もなき毒』宮部みゆき

(幻冬舎)。我々は攻撃的な悪意をもった人物に対して有効な防御策をほとんど持ち得ないという現実を突き付けられて、なんとも気が滅入るつらい読書だった(サスペンスとしては面白く読めたが)。この現実に嘆息する財界の大物の姿が最も印象的で、脇役ではあるが彼の存在がこの作品の肝であると私は感じた。私は時代小説とファンタジーをほとんど読まないので宮部作品の現代ミステリにしか興味はないのだが、『名もなき毒』には『火車』や『理由』に感じられなかった凄みがある。読まずにいた『模倣犯』も無視できなくなってきた。
by akuto9 | 2007-02-11 11:31 | 意識朦朧書評


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