率直で、誠実で、とても良い本だった。あまりにしみじみしてしまい、しばらく気持ちが落ち込んでしまった。感動的な小説、ということで100万部を越す売れ行きになっているわけだが、この作品は普通の「小説」ではなく、エッセイとノンフィクションが混ざりあった「リリー・フランキー自伝」としか言いようのないものだ。一人の男があまりに率直に自分と家族を語る。そのことの重さに読み手は厳粛な気持ちにならざるをえない。単に「感動」という言葉では片付けられない、もっと心の底の底にまで降りていくような重苦しい気持ちになった。