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『勝手にふるえてろ』 綿矢りさ/文藝春秋

なかなか読みごたえのあった前作『夢を与える』から早3年。久々の新作、タイトルもかっこいいし、おおいに期待して読んだのですが・・・。正直言って、私にはどうでもいいようなゆるゆるの恋愛小説で、かなり肩透かしを喰らいました。著者らしい意地悪な視点は健在で、途中までは、どういう展開になるんだろうという期待も持てたんですが、「勝手にふるえてろ」というタイトルの言葉が途中で出てきてしまったあたりから、なんかこのまま普通の恋愛小説で終わるのでは?という疑いが起こり、ラストも、え、こんな終わり方?というがっかりな読後感でした。本のPOPでの、「いちばん好きな人と結婚しなくちゃダメですか?」という著者の言葉がまあテーマなんでしょうが、その部分がうまく表現されていないと思うので(特に後半)恋愛小説としてイマイチだと思うし、何より、綿矢りさに期待してるのはこういう方向性じゃないよなーと思ってしまったのでした。もちろん、著者にとって読者の期待する方向なんて関係ない話だし、今いちばん書きたいのがこれなんだろうから仕方ないけど、寡作な作家の3年ぶりの新作がこれでは、あまりに残念です。普通の恋愛小説を書く作家はいくらでもいるので、綿矢氏には彼女特有のダークな部分をもっと掘った作品を書いてほしいと思うのです。まあ、そんな文句ばっか言ってる読者なんて、勝手にふるえてろ、ってことで(タイトルはほんとにいいと思う)。
by akuto9 | 2010-09-20 02:18 | 意識朦朧書評


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