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『八朔の雪』高田郁/ハルキ文庫

Rー40本屋さん大賞文庫部門受賞、というウリでたいそう売れているので読んでみました。普段全く時代小説は読まないんですが、他の本屋さんが強く薦めるのなら読んでみようかと思いまして。
料理人少女の成長物語(チャングムを薄めに薄めたような)、美味しそうな料理と蘊蓄(ちょっと美味しんぼを思いださせるような)、そして江戸の人情。ドラマ化すればさぞかし人気が出るだろうなと思いました(絶対ドラマ化の話は進んでいるはず)。マンガにしても面白そうだと思ったら、既にマンガ化されてるみたいですね。
ただし「小説」としてこの作品を見た場合、あまりに類型的な登場人物たち、いい人ばかりで都合のよすぎる展開、など物語に陰影がなさすぎて読みごたえ全然なし。まるで、最初にドラマやマンガがあって、この小説がそのノベライズ、みたいな感じです。著者はマンガ原作者出身のようなので、妙に納得してしまいましたが、ビジュアル化されてこそ魅力の増す物語なのではないかと思いました。
そんなわけで「俺はこんな都合のいい小説を積極的に売る気には全然ならん!」と、わめいていたら後輩に、「今はこういう世の中だから、せめて小説の中だけでも、いい人がたくさん出てくるいい話をみんな読みたがってるんですよ。悪徳さんみたいに嫌な話が好きなのが少数派なんだから、売上伸ばすためにちゃんとこういういい話を売らなきゃ駄目なんですよ!」とたしなめられてしまいました。
by akuto9 | 2009-11-19 13:50 | 意識朦朧書評


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