タイトルがよくない。自分の望み通りの殺人を依頼するという点では確かにオーダーメイドなのだが、「殺人クラブ」ではなかったし、このタイトルでは多くの読者が手に取らずに素通りしてしまう恐れがある。
なぜタイトルにケチをつけるのかといえば、小説の中身が非常に素晴らしかったから。こんなにいい作品なのに、タイトルでめちゃくちゃ損してるよ!と、もったいない気持ち。中身はいいのにジャケットで損してるアルバムみたいに。 と、いつまでも文句を言っても仕方ないので良いところを。中学2年生女子の、学校での人間関係が世界のすべてであるような、自意識過剰で息苦しい日常をとても丁寧に描いていて非常に読み応えがある。読んでいて、「俺は中学生の時に女子じゃなくて本当によかった」と妙な感想を抱いてしまった。もちろん中2男子だってろくなもんではなく、自分は絶対に中学時代には戻りたくないと思っているくらいだが、この小説は著者も主人公も女子なので、男子のダメダメな部分がかなり薄めて書かれているのでそんなに男子の部分は気にならなかった。むしろ男子は美化して書かれすぎな気もするが、まあそこはいいや。クラスの中には暗黙の序列があって、いけてない男子を「昆虫系」とネーミングしている。明らかに昆虫系であったろう私は、そんな中学生のクラスの雰囲気を見事に描き出し、思い出させてくれた(思い出したくはなかったが)著者の力量をすごいなーと感心した。著者インタビューでも、これまで封印してきた「中学生」をかなり気合を入れて書ききった、というようなことを述べていたが、その意気込みが伝わってくる力作だ。 ヤングアダルト小説の新しい定番となるのは確実だろう。そして大人が真剣に読めるヤングアダルトものとしても稀有な一冊。特にラストシーンの鮮やかさが素晴らしい。自分は「トイストーリー3」のエンディングなどを思い出してしまった。辻村作品は何作か読んだことがあり、好きなものとつまらなかったものにはっきり分かれていたが、これは自分の中ではダントツに最高傑作です。現時点では今年の上半期第一位に挙げておきます(そんなにたくさん読んでないけど....)。
by akuto9
| 2011-06-27 12:35
| 意識朦朧書評
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